訓練が行き届いていない兵士達は正しく隊列を組むことができない。 経験の少ない兵士達は戦場で自分がやるべきことが判らない。 彼らは自分のすべきことも戻るべき部隊も判らぬまま、自分の周囲の動くあとを追いかけて動く。 子檀嶺城始末ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
敵兵の命を奪う必要はない。敵兵を動けなくすればいい。 戦場で動けない人間は、息があっても戦力にはならない。 怪我をした当人だけではない。動けなくなった一人を後方に運ぶのに、一人か二人の手が塞がる。 子檀嶺城始末 ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ #ネット小説大賞十参加
振り返ると、赤い旗を掲げる一軍がこちらの最後尾を叩いているのが見えた。 率いているのは巨馬に打ち跨がった大柄な将だった。 「そちら様はさぞ名のある将なりとお見受けいたします。この若輩者に一槍お手解てほどきを頂きたし!」 子檀嶺城始末ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
弾を撃ち出さぬ大砲の轟音。叩かれる担い箱の進軍太鼓じみた音。打ち鳴らされる陣笠が立てる千万の鎧武者の歩みに似た音。腹の底から叫び上げる鬨の声。 子檀嶺城始末―こまゆみじょうしまつ― ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
人間は役割を与えられると、それらしく振る舞うようになる。 権威のある者の役を得た者は、権威のない者から見ると、権威のある者のように見える。 子檀嶺城始末―こまゆみじょうしまつ― ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
四郎兵衛が伍円坊の持つ修験者の情報網から知り得た情報というのは、 「徳川様方は兵一万。真田は二千足らずで、それも年寄りや女衆まで掻き集めた烏合の衆」 で、あった。 誰の耳目を持ってしても「真田方が敗北する」と判じられる筈だ。 子檀嶺城始末 ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
『これは、いかぬ!』 氷垂が何をするつもりなのかを源三郎が覚ったのは、まさしく「その直前」であって、彼にできた準備と言えば、両手で両耳を押さえることだけだった。 空が割れるような大きな音が鳴った。 子檀嶺城始末―こまゆみじょうしまつ― ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
「だからよ、真田が負けるより前に、俺達は徳川方に付いたってことにするわけだ。 『俺達は徳川様に身方する』 って始まる前に触れ回っておけば、徳川が目を付けてくれる。 『たいした、でかした』 とお褒めの言葉だってもらえるさ」 子檀嶺城始末 ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
悟円坊は炎の中に抹香を投げ入れた。良い香気がし、白い煙が天へ昇ってゆく。 薫香は場を清めるものだ。 悟円坊は、掘っ立て小屋と石積みの塚のある、食い詰め牢人達が蜷局を巻いているこの場所を、あっという間に聖域に変えた。 子檀嶺城始末 ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
この少女、名を氷垂《つらら》という。 本名ではない。 顔立ちなどからすると、年の頃十五、六と見受けられるのだが、実のところ二十歳を迎えた源三郎より二つも年上なのだ。 子檀嶺城始末―こまゆみじょうしまつ― ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
「それで源三よ、何がしたい?」 「塩田の一揆勢の対処を、それがしにお任せいただきたく」 「一揆?」 「青木の、子檀嶺城に……」 「おお、あの古城か。そういえば、あそこには何の手も打っておらなんだ」 子檀嶺城始末―こまゆみじょうしまつ― ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
『若様の武運長久を祈願するのが、あたくしの役目ですからね』 そう理屈を付けて、氷垂はできるだけ夫の傍かにいようとする。 源三郎の「武運長久」の為に役立つならば、自ら山を、里を、戦場を走り回る。 子檀嶺城始末―こまゆみじょうしまつ― ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
「お主も砥石へ行くか?」 氷垂は口惜しそうな不満そうな顔を作った。 「心引かれますが、若様が砥石のお城に入ったと殿様に伝える所までが、今日のあたくしのお仕事です」 源三郎も口惜しそうな不満そうな顔をした。 子檀嶺城始末 ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ #ネット小説大賞十
「そもそも、だ。あの真田の連中と俺達のどこが違うと、お前は思っている?」 「何から何まで違ってるでしょうよ。 向こうは信濃や上野にそれぞれ二つも三つも城を持っている。 だがこっちときたら、この『古城』が一つきり」 子檀嶺城始末ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
「あたくしが若様の足手まといになるとでも仰いますので?」 頬を膨らませた氷垂へ、源三郎は、 「逆だ。私がお前の足に追いつかない」 真面目顔で言ったものだ。 背後で源二郎が肩を小刻みに震えさせていた。 子檀嶺城始末 ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ #ネット小説大賞十参加
訓練が行き届いていない兵士達は正しく隊列を組むことができない。 経験の少ない兵士達は戦場で自分がやるべきことが判らない。 彼らは自分のすべきことも戻るべき部隊も判らぬまま、自分の周囲の動くあとを追いかけて動く。 子檀嶺城始末 ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
杉原四郎兵衛は逃げた。 「オタクラこくでねぇ! なんで俺が山猿に頭を下げなけりゃなんねぇンだ!」 吠ほえて、杉原四郎兵衛は塩田平の中を逃げた。 つまり、真田から逃げると言いながら真田の勢力内に残り続けた、ということでもある。 子檀嶺城始末ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
皆、疲れていた。腹を減らしていた。 先導の者に、 「あとどれほど歩けば良いのか?」 と問う気力も湧かないぐらいに心身が萎えている。 何も考えられないから、何も考えずに、ただ前を行く者の尻の後に付き従って、山道を這はい上る。 子檀嶺城始末ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
そこが真田という地名であるから彼らは真田氏を名乗っているのだが、元をたどると清和源氏だとか、滋野朝臣だとか、望月氏だとか自称している。 これが四郎兵衛のような由緒正しい塩田衆に言わせれば、 「眉唾物だ」 ということになる。 子檀嶺城始末 ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ
「だからよ、真田が大負けに負けるより前に、俺達は徳川方に付いたってことにするわけだ。 戦が始まる前に触れ回っておけば、真田が負けた後に徳川が目を付けてくれる。 お褒めの言葉だってもらえるさ」 子檀嶺城始末 ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ #ネット小説大賞十
「さても、そちら様はさぞ名のある将なりとお見受けいたします。願わくば、この若輩者に一槍お手解きを頂きたし!」 子檀嶺城始末―こまゆみじょうしまつ― ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ #ネット小説大賞十
人間は役割を与えられると、それらしく振る舞うようになる。 子檀嶺城始末―こまゆみじょうしまつ― ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ #ネット小説大賞十
高砂や この浦舟に 帆を上げて この浦舟に 帆を上げて 月もろともに 出潮の 波の淡路の島影や 遠く鳴尾の沖過ぎて はやすみのえに 着きにけり はやすみのえに 着きにけり 子檀嶺城始末ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ #ネット小説大賞十
「お前は女にしておくのが惜しいな。男に生まれておれば、私などよりもずっと良い武士になったに違いない」 「御免被ります。もしあたくしが男に生まれておりましたなら、こうして若様のお側にいることができません」 子檀嶺城始末 ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ #ネット小説大賞十
人間は役割を与えられると、それらしく振る舞うようになる。 子檀嶺城始末 ncode.syosetu.com/n0482hj/ #narou #narouN0482HJ #ネット小説大賞十参加
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